本記事は Claude Code が手元で動く状態を前提に書かれています。未導入の方は、先に 準備ガイド(所要20分) を済ませてから戻ってきてください。
第1章磨いたプロンプトが、4日目で壊れた
2026年5月のある月曜、朝の予定整理を AI に任せようとして、その日のうちにわかったことがあります。
プロンプトをいくら磨いても、業務は「動かしつづける」ところまで届かない。
最初に書いたのは、こんなプロンプトでした。
あなたは私の朝の段取り係です。
今日の Google カレンダーを読み、優先度の高い順に
15分単位で工程表を出してください。
# ルール(抜粋)
- 午前は深い仕事を優先する
- 午後は会議・連絡業務を集める
- 各ブロックに「目的1行」を添える
- 12:00-13:00 は昼休みを死守する
- 16:00 以降は緊急以外は受けない
(以下、ルール 12箇条が続く)
ChatGPT に貼って実行すると、それなりに使える工程表が出ます。月曜の朝、火曜の朝、水曜の朝。3日連続でうまく動きました。
4日目の朝、同じプロンプトで実行すると、工程表ではなく「お疲れさまです。今日も頑張りましょう」という励ましだけが返ってきました。
ルールを書き足し、命令を強くし、構造化しました。1ヶ月で書き換えは 20回を超え、最終的に 1,500トークンを超える「最強プロンプト」が完成しました。
それで安定したか、というと、しませんでした。
第2章何が起きていたのか
問題はプロンプトの精度ではなく、状態の保持にありました。
朝の段取りには、3つの「状態」が要ります。
1. 自分の優先度(今週のテーマは何か)
2. 自分の段取りグセ(午前は深い仕事、午後は会議)
3. カレンダーの実データ(今日の予定)
このうち 1 と 2 は、毎回プロンプトに書き直す必要があります。書き忘れると、AI は一般論で答え始めます。3 は ChatGPT 単体だと取れません。コピー&ペーストで補うしかなく、その作業に毎朝 5分かかっていました。
プロンプトの精度を上げても、状態を渡し続けるコストが減らない。これが、磨いたプロンプトが「無力」だった理由でした。
第3章プロンプトは「状態」を持てない
プロンプトは、毎回ゼロから始まります。
これは弱点ではなく、設計です。LLM のセッションは状態を持たないように作られているので、毎回ゼロからのコンテキスト構築が前提になる。
ただ、業務はその逆を要求します。業務には文脈があり、好みがあり、過去の決定があり、来週の予定があります。それらを毎朝 1,500トークンで書き直すのは、現実的じゃありません。
要るのは、プロンプトに「状態を持たせる仕掛け」です。
ここで Claude Code が効きます。Claude Code は、業務に必要な4つの部品を、ファイルとフォルダで実装します。コードではなく、設定です。
i. メモリ ─ 永続的な記憶(自分の文体・優先度を覚えさせる)
ii. 知識ベース ─ 参照可能なデータ(プロジェクト・顧客・進行状況)
iii. サブエージェント ─ 役割を持った別人格(調査・校正・設計)
iv. カスタムコマンド ─ 業務の起点(1コマンド = 1業務)
第4章4つの部品で、組み直した
組み直しは、4つのファイルから始まりました。まずは 何をどう動かすか の全体像から見ていきます。
/daily-schedule を1行打つ
4ファイルを1つのフォルダにまとめます。フォルダ構成はこれだけ。
このうち memory/ と knowledge/ はAIに覚えさせる中身、commands/ は動きの起点です。それぞれの中身を順に見ていきます。
① 文体メモ ─ memory/style.md(38行)
自分の文体のメモ。これを覚えさせると、AI の出力が「自分の言葉」に近づきます。
# 文体メモ 体裁: です・ます調 文の長さ: 1文 60字を目安 苦手語: 「実は」「ぶっちゃけ」「めちゃくちゃ」 好きな構造: 結論 → 根拠 → 次の動き 強調記号: ** は使わず、行頭で 「重要:」 と書く # 出力の癖 - 箇条書きは 3項目までに収める - 「〜と思います」より「〜です」を選ぶ - 数字は半角、単位は全角の前にスペース
② 今週のテーマ ─ memory/priorities.md(12行)
今週何に集中するか。日曜の夜に書き換えるだけ。
# 今週(2026-W19)のテーマ 月曜: LP 改修 火曜: Play 01 執筆 水曜: 商談 2件 木曜: 検証編 下準備 金曜: 週次振り返り # 今週は引かない予定 - 火曜 9-12 (Play 01 集中時間) - 木曜 14-17 (検証編 下準備)
③ プロジェクト一覧 ─ knowledge/projects.md(28行)
進行中のプロジェクト一覧。「A社」「B案件」と言われたときに何を指すかを引ける、住所付きの知識ベース。
## AIプレイブック - 公開URL: aiplaybook.jp - 創刊号: 全 10本 - 公開ペース: 週 1 (水曜朝) - 直近の課題: Play 01 の三点開示 確定 ## 取引先 A - 関係: 月次面談あり - 月次面談: 第 3水曜 11:00 - 直近の論点: 体制移行の合意形成 (後略 ─ 計 6プロジェクト)
④ 日次予定コマンド ─ commands/daily-schedule.md(50行)
朝、ターミナルで /daily-schedule と打つだけで動きます。コマンドの中身は、上の 3ファイルを順番に参照する手順書です。
# /daily-schedule ## 入力 - バッファ時間 (デフォルト: 15分) ## 動き 1. Google Calendar から今日の予定を取得 (MCP経由) 2. memory/priorities.md を読み、今週テーマを把握 3. memory/style.md を読み、文体を合わせる 4. knowledge/projects.md を読み、固有名を引く 5. 15分単位で工程表を組む 6. 各ブロックに「目的 1行」を添える ## 出力フォーマット 09:00 ─ Play 01 草稿 (今週テーマ) 目的: 「磨いたプロンプト」の失敗を 800字で 10:30 ─ 取引先 A 商談準備 目的: 体制移行案の論点整理 (後略)
合計 38 + 12 + 28 + 50 = 128 行。これが「実コード行数」の中身です。プログラミングではなく、自分の業務を文章で書き出しただけ。
第5章月¥0 で動く理由
Claude Code は、Claude Pro プラン(月 ¥3,000)の範囲で動きます。追加のサブスクは無し。
外部 API も使っていません。Google Calendar の取得は MCP(Model Context Protocol)経由なので追加料金なし。設定ファイルとフォルダは GitHub に置いて、ローカルから読むだけ。
つまり、Play 01 の追加コストは ¥0。これが「¥0/月」の中身です。
補足: Claude Pro 自体の費用は別途必要です。本誌では「Play を追加で動かすのにいくらかかったか」を実運用コストとして開示しています。
第6章2回踏んだ、失敗
きれいに動いたわけではありません。最初の 2週間で 2回失敗しました。両方とも、これから組む人が同じ場所でつまずく可能性が高い設計ミスです。
メモリに「業務の文脈」を全部入れた。
最初は priorities.md に、今月のすべての予定を書き込みました。120行を超えた時点で、AI の出力が遅くなり、その上、関係ない予定まで工程表に混ざるようになりました。
教訓: メモリは「最小限」。今週のテーマだけを置く。残りは knowledge/ 側に分ける。境界線は「毎週書き換えるか/週に1回も触らないか」で決める。
1コマンドに、3つの業務を詰め込んだ。
/daily-schedule で、工程表作成 + メール下書き + Slack 投稿 まで一気にやらせようとしました。動きが重く、途中で止まることが増えました。
教訓: 1コマンド = 1業務。複数の動きをつなぐなら、それぞれを別コマンドに切って、Claude Code 側に「順に呼ぶ」と書く。
第7章動き出した、月曜の朝
組み終わった次の月曜、ターミナルを開いて /daily-schedule と打ちました。
3秒後、画面に工程表が出ました。今週のテーマが拾われ、文体が「です・ます」で揃い、取引先 A の月次面談まで含まれていました。
磨いたプロンプトと、128行の設定ファイル ─ 何が変わったかを並べると、こうなります。
もう一度言いますが、コードは書いていません。38 + 12 + 28 + 50 = 128 行の文章を、4つのファイルに分けて置いただけです。
磨いたプロンプトでは届かなかった「動きつづける」場所に、設定ファイルとフォルダで届きました。
いま、1合目に到達。
- 01「最強プロンプト」が、無力な理由入門編 ・ 公開済
- 02Claude Code を秘書として、最初の30分入門編 ・ 05.21
- 03毎朝の予定を、AIに組ませる入門編 ・ 05.28
- 04Google Calendar を、AIに渡す汎用業務編 ・ 06.04
- 05メールトリアージを、仕組みに汎用業務編 ・ 06.11
- 06自分の文体を、覚えさせる汎用業務編 ・ 06.18
- 07リサーチを、並列で動かす汎用業務編 ・ 06.25
- 08議事録から、TODOを抜く専門業務編 ・ 07.02
- 09契約書レビューを、構造化する専門業務編 ・ 07.09
- 10返信漏れを、検知する専門業務編 ・ 07.16