この記事は、Play 05 の MCP が手元で動いているところから始まります。/daily-schedule でカレンダーがちゃんと取れていればOK。ここに Gmail を1つ足すだけです。まだなら、先に Play 05 を済ませてきてください。
第1章朝、受信箱を開いて10分が消える
予定整理が /daily-schedule で3秒になった次の週、変なことに気づきました。せっかく浮いた時間が、今度は受信箱でまるごと消えている。あれ、結局朝が忙しいぞ、と。
犯人はメールでした。受信箱を開いて、新着40件を上からなめて、「これは今返す」「これは後でいい」「これは見なくていい」を1通ずつ仕分ける。1通15秒だとしても、40件で10分。/daily-schedule で稼いだ3秒が、こっちで10分ぶん溶けてたんです。本末転倒ですよね。
でも、よく見ると消えているのは 時間だけ じゃありませんでした。朝9時から「これ急ぐやつ?」を40回連発すると、10時に原稿を書こうとしても最初の一文が出てこない。受信箱を閉じた瞬間、その日に使える脳がひと段落ぶん減ってる感じ。これ、よく言う 判断疲れ ってやつでした。正直、最初は「メールくらいで大げさな」と思ってたんですが、効きます。
つまり敵はメールの「量」じゃない。毎朝40回ぶんの判断を、自分の頭に積ませていることです。だったら、仕分けの基準を先に文章で書いておいて、毎朝の40回を「ルールに当てるだけの作業」に落とせばいい。頭は本来の仕事に取っておけます。次の章で、まずそのルールを自分の手で書き出します。
第2章4つに分けるルールを、自分で書く
AIに仕分けを任せる前に、やることが1つあります。自分が普段どう仕分けているかを、言葉にすること。「なんとなく今返す」の“なんとなく”は、あなたの頭の中にしかありません。そのままだとAIには渡せないんです。
自分の受信箱を3日ぶんじっと眺めて、最後はこの4つに落ち着きました。
この4つを、そのまま knowledge/triage-rules.md という1枚のファイルに書き起こします。30行。これがAIに渡す「あなたの判断基準」になります。では、その中身を見てください。
# メール仕分けルール ## NOW(今日中に返す) - From が顧客個別メールアドレス(社名@ドメイン) - 件名に「至急」「本日」「今日中」が含まれる - 期限が今日中と本文に書かれている - 直属上長からの個別宛て質問 ## TODO(今週中に返す) - 商談調整、進行中案件の確認、見積もり依頼 - 本文に質問形が2つ以上含まれる - 直接 To で宛てられているが、期限が今日でない ## LATER(来週以降) - 「お時間あるときに」「急ぎではないですが」を含む - 長期検討の打診(3ヶ月以上先の話) ## SKIP(返さない) - ニュースレター、配信専用アドレス、no-reply - 社内CCで、宛先(To)に自分が入っていない - 宣伝・営業アプローチ(first contact)
ここでのコツは、きれいに整えようとしないこと。分類に正解はないので、自分の基準を そのまま 書けばいいんです。むしろ整えにいくと漏れます。「自分が普段やってること」をそのまま文章にするだけ。あなたの受信箱を3日眺めて、まずこの30行を書いてみてください。
第3章Gmail MCP を、12行で繋ぐ
次は、AIに受信箱を読ませる配線です。Play 05 で組んだ mcp.json に、Gmail を1つ足すだけ。カレンダーを繋いだときとほぼ同じ手順なので、身構えなくて大丈夫です。
まず Google Cloud Console で、これだけやります。
- Play 05 で作ったプロジェクトに「Gmail API」を追加で有効化
- OAuth クライアントは 同じものを使い回せる(プロジェクト単位)
- スコープに
gmail.readonlyとgmail.modifyを追加
{
"mcpServers": {
"gcal": { /* Play 05 で設定済み */ },
"gmail": {
"command": "mcp-server-gmail",
"env": {
"GMAIL_CLIENT_ID": "<Play 05 と同じ>",
"GMAIL_CLIENT_SECRET": "<Play 05 と同じ>",
"GMAIL_SCOPES": "gmail.readonly gmail.modify"
}
}
}
}
なんで gmail.modify まで入れるのか。あとで仕分け結果にラベルを貼るので、それに要るんです。逆に、送信する権限(gmail.send)はわざと外しています。ここでAIにやらせるのは 「読む・ラベルを貼る」まで。返信を送るのは、まだ自分の手でやります。勝手に送られたら怖いですからね。この env を貼ったら、次はいよいよコマンド本体です。
第4章/mail-triage コマンドを書く
ここが心臓部です。といっても、やってることは「受信箱を取ってきて、さっきのルールに当てて、ラベルを貼る」を順番に書いた手順書。50行です。
# /mail-triage 朝の受信箱を NOW / TODO / LATER / SKIP の4つに仕分けします。 ## 動き 1. Gmail MCP で 過去24時間の未読受信を取得 (古いメールは対象外。これは 失敗01 で学んだ) 2. knowledge/triage-rules.md を読み、4分類の基準を把握 3. 各メールを基準に照らして判定 4. 結果に Gmail ラベルを付ける: - NOW → "now" - TODO → "todo-week" - LATER → "later" - SKIP → "skip" 5. 標準出力に NOW と TODO のメール一覧を要約表示 ## 出力フォーマット NOW (3件) ├ A社・佐藤さん「明日の打ち合わせ件」 → 期限: 今日中 ├ B社「至急: 見積もり修正依頼」 → 期限: 今日中 └ 直属上長「来週の予算確認」 → 期限: 今日中 TODO (7件) ├ C社「進行案件の中間確認」 → 今週中 ├ ... ## 判定で迷ったとき - 60% 以上の確信があれば、その分類に置く - 50/50 の場合は TODO に倒す(NOW より厳しい) - 個人情報(住所、銀行)が本文にある → 必ず NOW
ついでに、memory/style.md の末尾に 「自分らしい返信の書き出し3行」を18行ぶん足しました。NOWのメールに返すとき、文体がブレないための保険です。memory/ をちゃんと使い込む話は、次の Play 07「毎回の自己紹介をやめて、AIに自分の仕事を覚えさせる」 でやるので、ここでは足すだけにしておきます。
足し算すると、30(ルール)+ 50(コマンド)+ 12(MCP設定)+ 18(style.md追記)= 110行。これが「実コード行数」の正体です。コードというより、自分の仕事を文章で書いただけ。書き終わったら、ターミナルで /mail-triage と打ってみてください。
第5章¥640/月 の内訳
気になるのはお金ですよね。Play 04 で API直叩きに切り替えた ¥320/月 に、今回の /mail-triage ぶんが上乗せされます。内訳はこうです。
・ /daily-schedule+/weekly-review(Play 04)= 約 ¥320
・ /mail-triage 平日5日 × 4週 = 20回 ・ 約 ¥280
・ Gmail API ・ ¥0(無料枠で収まる)
・ 試行錯誤・再実行 ・ 約 ¥40
合計 ¥640/月。1日にならすと約 ¥21 です。缶ジュース1本以下で、毎朝の10分と判断疲れが消える。自分は迷わず払いました。
第6章2回踏んだ、失敗
初回実行で、受信箱の全メール(半年分)を読みにいかせた。
最初のコマンドに、対象期間の指定を書き忘れていたんです。/mail-triage を初めて打った瞬間、Claude が涼しい顔で 「8,200件のメールを処理開始」 と返してきた。血の気が引いて Ctrl+C で止めましたが、その時点で API 代が ¥420 飛んでいました。たった1コマンドで月予算オーバー。やらかした、と思いました。
コマンドに 「過去24時間の未読受信のみ」の1行を足して、もう一回。今度は 8秒、API 代 ¥8 でスッと動きました。教訓は1つ。外部MCPは、処理する範囲を最初に絞る。トークンが減り始めてからでは遅いんです。あなたのコマンドにも、対象期間の1行を必ず入れてください。
TODO と SKIP の線引きが甘くて、上長のCC依頼が SKIP に落ちた。
運用1週間目の金曜、直属上長から「先週のCC、確認した?」と聞かれて、ヒヤッとしました。受信箱のラベルを見たら "skip"。CCで届いた「来週の予算配分について」が、まるごとスキップ扱いになっていたんです。読んでいない、とは言えませんでした。
犯人は triage-rules.md の 「社内CCで、宛先(To)に自分が入っていない」→ SKIP というルール。大半のCCにはこれで合うんですが、上長からの「確認しといて」CC だけは例外でした。そこで「From が直属上長なら TODO」を1行足したら、同じ取りこぼしは二度と起きていません。
分かったのは、メールの仕分けルールは 例外を1個ずつ書き足して育てるもの、ということ。最初から完璧なルールなんて書けません。週1回 /weekly-review で誤判定を見つけて、1行ずつ足す。あなたも最初の1週間は、ラベルを軽く見直す時間を取ってください。
第7章動き出した、朝の受信箱
組み終わった次の月曜。/daily-schedule を打って、続けて /mail-triage。3〜5秒で、NOW と TODO のメール一覧だけが画面に並びました。
もう受信箱そのものを開く必要はありません。NOW の3件だけ集中してさばいて、TODO は午後にまとめて触る。LATER と SKIP は、そもそも 視界から消える。あの「あとで返そう」の山が、勝手に整理されている感じです。
測ってみたら、朝の受信箱の時間は 10分 → 平均3分。でも効いたのは7分の短縮より、判断疲れが消えたことでした。10時から書く原稿の出だしが、明らかに軽い。あの「最初の一文が出てこない」が無くなったんです。
いまは受信箱を 1日2回、朝と夕方の /mail-triage でしか開かないようにしています。これは仕組みじゃなくて、自分への約束ごと。ここまで来たら、次は散らばった「自分の文脈」を1か所にまとめる番です。